このせかいに在るがまま
弐. まっくろなふたり






「なあ星原、昨日のプリント見せて」

「自分でやって」

「わかんねえし間に合わねえじゃん……おれ今日当たるし」

「ノートとらないからわかんないんでしょ」

「ちぇー…星原ほんと真面目だよなぁ」





翌日の朝のこと。


ショートホームルームが始まるまでまだ10分ほど時間があり、隣の席に座る星原くんは、1時間目の数学の課題プリントがまだ終わっていないと嘆くクラスメイトの滝口くんとそんなやり取りをしていた。



同じ年齢の学生の普通がわからないのであくまでもこのクラスを基準にした上での個人的な見解になってしまうけれど、課題を見せて と言われてそれを断れるのは、星原くんくらいなんじゃないかと思う。



断るのが面倒 または断る理由がないと思っている、もしくは、断ることができないか。

たいていの場合、その2択だと思っていた。




滝口くんは山岸さんと仲が良くて、いじめられるわたしを山岸さんと一緒になってわらうような、腐った人間。

そのことも相まって、なおさら そんな滝口くんのお願いを正論で断る星原くんはすごいと思った。




星原くん自身は滝口くんを友達だと思っていないから、どう思われてもいいとでもいうのだろうか。


クラスの人気者の腹のなかが真っ黒だなんて、きっと誰も疑わない。



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