このせかいに在るがまま
今日も病室には規則正しい機械音と微かな寝息だけが響いている。
布団から出ている細くて白い腕には沢山の管が繋がれていて、必要な分だけの栄養や薬がそこから姉ちゃんの身体に投与されている。
そういえば、寝てる間ってお腹空かないのかな。
姉ちゃんは食べること大好きだった。
特に甘いもの。異常なほどの甘党。ばあちゃんちで一緒に暮らしていた頃、よくおやつの取り合いをしていた。
ばあちゃんはケーキのときを覗いて基本的に大きなお皿にまとめて食べ物を出すから、最後の一個をめぐって姉ちゃんジャンケンをするのは毎日のことだった。
『天晴、昨日勝ったから今日は譲ってよ!』
『やだ。おれもチョコ食べたいもん』
『ケチだなあぁ』
『平等にジャンケンしてるんだからズルすんなよ姉ちゃん』
懐かしいな……、と ふと視界に写った病室の窓から見える景色を見ながら思う。