このせかいに在るがまま
「ねえ、この御守り、芽吹さんにとってそんなに大事なものなの?」
星原くんの手からそれを受け取ると、彼は抑揚のない声でそう言葉を紡いだ。
汚れたてのひらに乗せられた、手作り感満載の、“トワコ”とカタカナの刺繍が施された御守り。
ぱっと見でわかるほど、それにはかなり年季が入っていた。
――芽吹さんにとってそんなに大事なものなの?
わたしにとって、これはそんなに大事なものなのだろうか。
よくわからないままずっと鞄にいれて持ち歩いていた。鞄にいれていることすら忘れているような、そんなちっぽけな存在に思っていた。
帰路についている途中にふと鞄の中に御守りが入っていないことに気づいて学校まで戻ってきて、わたしを嫌うクラスメイトたちの仕業かもしれないと疑ってゴミ箱の中に躊躇なく手を突っ込んだ。
意識はあった。意思をもってそうした。
なるほど。わたしは、この御守りをそれほどにも大事に思っていたのか。
「…お母さんの遺品みたいなものだから」
「遺品、ね」
「別に、捨てられたならそれまでだったけど。御守りをゴミ箱に捨てるって……なんか縁起悪いし」