このせかいに在るがまま
「ホームルームはじめるぞー」
担任の声を右から左に流しながら、撫でられた髪の毛を直すように手櫛てぐしで梳かす。
最悪だった。今日は一段と気分が悪い。
無性にいらいらしていたせいか、鞄からペンケースや教科書類をいつもより乱暴に取り出した拍子にスマホがカバンから滑り落ちてしまった。
ホームルーム中で静かになっていた教室に、機械と床がぶつかり合う音が響く。
「すみません」と、だれにもきこえていないんじゃないかという音量で謝れば、少し離れた席――山岸さんがいるあたりから「うっさ、迷惑ぅ」とわざとらしい声が聞こえた。
「はい、芽吹 静かに。話続けるぞー」
担任の理不尽な注意にまた「…すみません」と謝る。
ばかばかしい。
キャリアに埋もれたダサい人生を送っているくせに。
ああもう、今日もやっぱりわたし以外どうでもいい。わたし以外幸せになるな。
谷口も山岸も担任も、みんな不幸になって、滅びてしまえ。
心の中で何度も舌打ちをして、窮屈なせかいを呪った。