このせかいに在るがまま





「はい」



床に落ちたスマホを拾ってくれたのは、さっきまで目さえもまともに合わせてはくれなかった星原くんだった。

わたしの机の上に 拾ったスマホを乗せた彼に「…ありがとう」と短くお礼をいう。



「芽吹さん」



そんなわたしに、星原くんは言った。わたしにしか聞こえないような、小さな声だった。



「ひるやすみ、図書室」

「え?」

「今日もやっぱり、きらいだな」




何が、とは言わなかった。


星原くんは何事もなかったかのように前を向き、担任の話を聞いている。



――今日もやっぱり、きらいだな




そうだね、わたしもそう思う。


このせかいの全部がだいきらい。

わたし以外、きみ以外、全部消えて無くなればいいのにね。




不満に生かされる星原くんとわたしの関係性に、名前はまだなかった。



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