このせかいに在るがまま






今はもう亡き母がくれた手作りの御守りだった。




中学3年生の時、わたしは課題作文で賞を取り、学校を代表して市内の作文コンクールで発表をすることになったのだ。

目立つことは嫌いなので、代表に選ばれたことを正直あまり嬉しく思ってはいなかった。



けれど、そんなわたしとは裏腹に、「とわちゃんは天才だ!」と誰よりも喜んでくれた母は、わたしがコンクールを何事もなく終えられるようにとお手製の御守りまでつくってくれたのである。




気まずくなってしまうかもとか、そういう可能性を考えずに、クラスメイトの星原くんに対して 遺品 という言葉をスッと口にできた自分に、すこしだけ引いた。




「拾ってくれてありがとう。探す手間、省けて助かった」

「どういたしまして」

「…じゃあ、わたしは帰るので」




星原くんと話すことはこれ以上なかった。


むしろ、放課後にまで彼とふたりきりでいるところを誰かに見られたらめんどくさいことになるので、この場を一刻も早く離れたいと思っていた。




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