このせかいに在るがまま
星原 天晴くんはわたしの隣の席の男の子で、クールでミステリアスでかっこいいだなんだと騒がれているクラスメイト。
正直な話をすると、教室で過ごす必須の時間以外、わたしはあまり彼をそばにおいて置きたくはなかった。
理由はひとつ、彼が人気者だから。
“澄ましてるかんじがムカつく”という理由でクラスの女子からのいじめのターゲットにされるわたしとは格がちがう。
つい1か月ほど前にくじ引きによって決められた席替えで星原くんの隣がわたしだと知った女子たちにわたしが何をされたのか、星原くんはきっと知る由もない。
トイレに連行されて頭から水をぶっかけられて最悪だったと言ったら、星原くんはどんな顔をするのだろう。
御守りをブレザーのポケットにしまい、ぺこりと軽く頭を下げて教室を出ようと体の向きを変える。
「芽吹さん」
歩き出そうとしたわたしを、星原くんが呼び止めた。
「芽吹さん、家に帰るだけ?」
「え?」
「このあと、時間ある?」
「え?」
「だから。暇なら、遺品の話 もっと詳しくきかせてよ」