このせかいに在るがまま









わたしの母はすこし変わっていて、いつまでも好奇心をわすれない、おおきな子供みたいな人だった。




おっちょこちょいで、年に平均7回鍋を焦がす。わたしのことを「世界でいちばんかわいい」と毎日ほめちぎる親ばかっぷり。

裁縫が得意で、御守りのほかにも手作りできるものはなんでも自分でつくってしまうような、そんな母だった。




父は穏やかで、母の奇行をどれもこれも笑って許してしまうようなやさしい人だった。仕事がどんなに忙しくても家庭をおろそかにしない、常識があって誠実な父。




いくつになってもラブラブでふたりの世界を忘れない両親に囲まれて育ったわたしは、夢見がちで無邪気な母とは反対の、現実主義の人間になった。


やさしくて穏やかな父ともまた反対に、自分以外どうでもよいと思えてしまう心をもった、冷めた人間になった。




作文コンクールの件だって、母が勝手に盛り上がって御守りまで用意しただけである。

わたしはそのころにはすでに母のことをうざいなあと思っていたし、こんな母と何十年も一緒にいる父もどこかねじが飛んでいるんだろうなと思っていた。




もらった御守りは、その日のうちに机の引き出しにしまいこんだ。



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