このせかいに在るがまま
一通り学校を回って、おれたちは校庭に出た。
辺りに明かりがないからか、見上げた空には星がよく見える。もう流石に姉ちゃんも満足しただろうからと、「帰ろう」と声をかける。
聞こえなかったのか、姉ちゃんは返事をしなかった。「姉ちゃん?」と、肩を叩いて呼ぶと、ぼんやりと空を見上げていた姉ちゃんは、「天晴」とおれの名前をぽつりと零した。
───最後にひとつだけ、見たいものがある
怖い怖いと言っておれの腕に巻きついていたのがまるで嘘だったかのように、姉ちゃんは慣れた足取りで屋上につながる非常階段を上る。
今度はおれが、置いていかれないようにと姉ちゃんの背中を追った。
目を離したら姉ちゃんはこのまま消えてしまうんじゃないかと、そんな馬鹿なことを漠然と思っていたのだと思う。