このせかいに在るがまま
屋上に繋がる扉に書かれている立ち入り禁止の文字は見かけだけだった。
「ねえ、入ってみようよ」
「防犯カメラとかついてないのかな」
「この学校にそんなのあるわけないじゃん。絶対バレないよ」
黄色いテープを外すと、その扉はいとも簡単に空いた。
足を踏み入れてすぐ、目の前に広がる空を見て、おれは言葉を失った。「すごい……、」と呟いたおれの手を掴み、姉ちゃんは「こっちの方が良く見えるよ!」と誘導してくれた。
冷たいコンクリートに寝そべって空を見上げる。
姉ちゃんはどうして屋上に入れることを知っていたんだろうとか、ここに来るのはもしかして初めてじゃないんじゃないかとか、そう言えば時々、深夜に 姉ちゃんの部屋のドアが開く音で目が覚めることがあったなぁとか。
思い出すことは色々あって、だけどそのどれもが この星空の下ではちっぽけに思えたのだ。
「……この空、天晴みたいでいいなぁ」
姉ちゃんの言葉が、ひどく鮮明におれの耳に届く。
どうしてか、少しだけ胸がざわついた。