このせかいに在るがまま
予備校にはいかずネットカフェで眠っていたことをしらなかった両親は、いつもの帰宅時間になっても帰ってこないわたしを心配して予備校の最寄り駅まで車を走らせたらしい。
深々と雪が降る夜。
スリップ事故に巻き込まれた両親は、呆気なく帰らぬ人になった。
帰宅時間がすこし遅れただけでそんなに慌てないでよとか、迎えにくるのに夫婦でわざわざ来ないでよとか、そんな文句はもう届かない。
兄弟も友達もいないわたしに残ったのは、家族の帰ってこない大きな一軒家と、数か月前にしぶしぶ受け取ったまま机の引き出しにしまい込んでしまった、母お手製の御守りだけだった。