このせかいに在るがまま
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「おれは姉ちゃんの名前好きだった」
「…、うん」
「でも、おれがそこでそう言うのはなんか違う気がして。自分の名前の由来なんてさ、聞いたときに『そうだったんだ』ってなるくらいで そんなに真剣に考えたこと無かった。何を言っても嫌味に聴こえちゃうかなって考えたらさ、なんも言えなかった」
星原くんとお姉さんの関係性は決して悪いものでは無いけれど、そこに わたしには想像できない理由が存在していることも確かだった。
なんて声をかけるのが正解なのだろうか。
何を言っても、わたしは星原くんの過去に寄り添うことが出来ない気がする。ぼんやりと星を見上げて、「そっか……」と情けない返事をすることしか出来なかった。
星原くんの昔話は、星原くんのことを知れたように思えて、余計に謎が深まるばかりだった。
星原くんがあの家で暮らすことになった過程も、ご両親がどこにいるのとかも、お姉さんと今はどんな関係なのかも、何一つ教えて貰えていない。
広がる星原に、聞きたかった話は全部吸い込まれてしまったみたいだ。
「ごめんね、こんな話をするつもりは無かったんだけど」と謝る星原くんに、わたしは小さく首を振った。