このせかいに在るがまま
「……ちがうかな」
星原くんがぼやく。
過去を懐かしむみたいに、ぼんやりと空を見上げたまま、星原くんとわたしの目が合うことは無かった。
違うかな、星原くんはそう言った。
「芽吹さんとおれは友達じゃないよ」
「……そっか」
「なんか多分、そういうんじゃないと思う。漠然としてるけど……なんだろ、そんな綺麗なものじゃないでしょ、おれら」
はは、と星原くんが笑う。どんな顔で、わたしは彼に返事をしたんだっけ。暗闇に光る星が突然輝きを失ったような、そんな感覚だったことだけはたしかに覚えている。
友達じゃない。
わたしと星原くんは、綺麗な関係ではないらしい。
………そっか、そうなんだ。
曖昧なまま勝手に彼を友達だと思い込まなくてよかった。
「もう帰ろっか」
「……うん」
立ち上がり汚れを払う星原くんを見て、今日 きみと過ごした時間が幻じゃないことだけを 祈って。
ざわつく心に気付かないふりをして、わたしたちは屋上をあとにした。