このせかいに在るがまま
胸倉をつかんでいた手をぱっと離され、バランスを崩した身体を押される。よろめいて支えきれなかったわたしの身体は、机が散乱する床に倒れ込んだ。
「ほらぁ、はやくぅ」
「…、っわたしは」
「やり方わかんないなら教えてあげるよぉ?ほら、こうやってさぁ!」
後頭部をつかまれ、力ずくで沈められる。突然のことに耐えきれず頬がついてしまった。床の冷たい温度が伝う。
ああもう汚いな、最悪だ。
「謝れっつってんじゃん?あはは、日本語わかんない?」
「ちょ、ちょっと、やりすぎじゃ…、」
「はぁ?なにあんた、あたしに指図する気?」
わたしが押したのは、山岸さんをぶっ壊すコントロールボタンかなにかだったのだろうか。
壊れたみたいに気色悪い笑顔を浮かべてわたしに土下座を強要する山岸さんを、ずっと黙って見ていた取り巻きの女子生徒が止めている。
しかしながら、それもほぼ無意味だった。
彼女たちは顔面蒼白になっている。
うわべだけの関係は、なにかひとつの物事をきっかけにどんどん崩れていく。
山岸さんの言葉に、彼女たちはぐっと口を噤み俯いた。