このせかいに在るがまま





星原くんは、わたしがこれまで山岸さんたちにいじめられている様子を散々見てきても、助けてくれたことは一度もなかった。


それはわたしのことが嫌いだという感情からではなく、ゴミみたいなクラスでそこそこ平和に過ごすためだったはずだ。そしてそれを、わたしも気に留めたことはなかった。



「ちがうよ」

「え?」

「おれが口出ししたら、芽吹さんは裏でもっとひどい目に合うんじゃないかって思ってたからそうしてただけ」




けれど、その解釈の仕方は少しだけ違ったらしい。



「芽吹さん、どんなことされても何も言わないから、変におれが口出して悪化するのは嫌だったんだ。けど、今日言い返してるの聞いて、おれももっとちゃんと動いてたらよかったなって……全部今更の言い訳でごめん」

「…ううん、いいよ。ありがとう」

「やめてよ。おれなんもしてない」




星原くんといると、わたしは最強になった気持ちになってしまう。それが錯覚でありとんだ勘違いであることは承知だ。


その上で、星原くんと同じ世界を生きていてよかったと、心から思っている。



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