このせかいに在るがまま






「ごめん芽吹さん」



何に謝っているのか分からなかった。少しだけ眉をひそめたわたしに、もう一度「ごめんね」と声が落とされる。


分からない、分からないよ、何も。



わたしが彼に対して形を欲しがるのはおかしな話だと思う。けれどの時​────あの星を見た時、本当は、わたしときみが"友達"だと言ってほしかった。関係に名前が欲しかった。



「…星原くんはわたしのことたくさん知ってるのに変だね」

「…ごめん」

「……ごめん、わたしこそ」




こんなこと聞いても困らせるだけだって気づいているのに止められなかった。


自分だけは特別だったって、それが思い込みではないと確信したかったのかもしれない。わたしのためなら何でもできるという彼を、そばにおいて置ける理由が欲しかったのかもしれない。


「好き」とも違う特別が欲しかっただけなのだと思う。



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