御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 とっくに諦めていたけれど願ってもかまわないのかな?

「芽衣のことはもちろん、私も大事にしてもらえますか?」

 明臣さんは私のおでこに自分の額を重ね笑った。微笑んでいるのになんだか泣き出しそうにも見える。

「早希の望むことはすべて叶えてやるって言っただろう。もう二度と離さない」

 そのまま口づけられ私も目を閉じて受け入れた。唇が離れると彼は意地悪そうに尋ねる。

「俺に愛される覚悟は決まったか?」

「覚悟しなくてはならないほど愛されるんです?」

 すかさず軽い調子で返すと明臣さんは余裕たっぷりに笑った。

「試してみるか?」

 頤に手を添えられ何度も唇を重ねられる中で、時折舐めては食まれ様々な触れ方で刺激を与えられていく。

 リップ音が耳につき恥ずかしさで身を硬くするが、次第に小さな焦燥感にも似た灯火がチリチリと胸の奥を焦がしていく。

 物足りなさを感じて逆に苦しい。キスをしながらうっすらと目を開けると、こちらをうかがっていた明臣さんの目が弧を描いて細められる。

 驚いたのと同時に口づけが中断され、明臣さんは私の濡れた唇をゆっくりと親指でなぞった。

「もっと求めても?」

 不安混じりに目で同意するとすぐさまキスが再開される。

「っん……んん」

 ゆるゆると唇の力を抜くと間から舌を滑り込まされ、口づけはより深いものになっていく。応えたいのに正しいやり方がわからなくて心臓が暴れだし、結局は明臣さんにされるがままだ。
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