御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 取られた手を握り返すとさりげなく唇が掠め取られた。外なのもあり必要以上に慌てふためく私に対し、明臣さんはさらに頬に口づける。

「早希があまりにも可愛いから」

 こんな明臣さん、秘書をしていたときには想像もつかなかった。照れが収まらず、うつむく私の頭を彼は優しく撫でる。

 妥協を許さず厳しく真摯に仕事に取り組む姿も、こうやって柔らかく笑う明臣さんもすべて含めて好きだと思う。

 これからもそばにいて、色々な彼を見られるのかな。

 保育園に迎えに行くと、部屋で遊んでいた芽衣が私たちの顔を見るなり嬉しそうにハイハイしながら近づいてきた。

「芽衣、楽しかったか?」

 すぐに抱っこをせがみ明臣さんが抱き上げた。やっぱり芽衣は明臣さんによく似ている。

 ここから引っ越しや入籍、親への挨拶などしなくてはならない案件はたくさんありそうだ。けれど、どれも明臣さんと芽衣と一緒なら乗り越えていけそうな気がする。

 私たちの関係が一変した夜、今思えばお互いを求めた自然な流れだったのかもしれない。あやまちだったのは、そのあとにお互い向き合わなかったことだ。

 でも、もう大丈夫。どんな私でも受け止めて揺るぎない愛を誓ってくれるあなたがそばにいるから。

 私は明臣さんに寄り添い芽衣に話しかける。穏やかな表情で芽衣を見つめていた彼と目が合い、私はとびきりの笑顔を向けた。
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