御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 ひとりで育てていけるのか、仕事はどうするのか。そもそも無事に産めるんだろうか。

 身内に頼れない事情のあった私が途方に暮れているとき、力になってくれたのが中学のときからの親友、(あかね)だった。

 彼女に心の内を打ち明けると、茜は親身になって彼女の実家を巻き込んで私を助けてくれた。

 茜の家は航空機の部品メーカーとして代々会社を経営している。それが株式会社ストリボーグだ。

 その技術は世界的にも名を馳せ、いくつもの企業と共同で様々な技術促進や開発を行っている。

 最近では電動航空機や小型飛行艇の軽量化に力を入れており、裕福層向けにオーダーメイド小型機の製作も承っている。

 昨年、茜の父から兄である尊氏に代替わりをしたばかりだ。つまり私は親友の兄の元で働いている。元々の仕事が秘書であり同じ業界だったのは、本当に運が良かった。

 さらに、芽衣を妊娠する前からうちに来ないかと誘われていた状況もあって、渡りに船と言っても過言じゃない。
 
 妹の親友という立場もあって社長にはありあまるほどの配慮をしてもらっている。産前産後は彼のオンライン秘書として自宅から勤務する形になっているのもそのひとつだ。

 芽衣が一歳になったら保育園に預けて本格的に働く予定になっている。

 考えだすと先の心配事や不安はきりがない。それよりも今ある幸せを大事にしないと。

 ひとり遊びしていた芽衣がぐずりだしこちらにやってきたので、私は後ほど送られてくる資料に目を通してまとめておくと社長に告げ通信を切る。
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