御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
慣れていない建物に加え、今はひとりでいることがどこか不思議で、現実味が湧かない。私は早足で目的地を目指した。
ヘアサロンはパリにも支店を持つ有名店だった。シャンデリアに金縁で装飾された鏡、真っ白なスタイリングチェアはゆったりと構えられていて、まるでお城のような内装だ。
一瞬ヘアサロンなのかどうか疑ってしまいそうになる。
「ご予約されていますか?」
店内に足を踏み入れるのをためらっていると、中から逆にスタッフに声をかけられる。若々しいが、それなりに貫禄を感じる女性だ。ベテランなのだとすぐに察しがつく。
たしか明臣さんの名前で予約していると言っていたので、私がぎこちなく彼の名字を告げる。
「……千葉です」
「千葉様ですね。お待ちしておりました!」
女性スタッフの顔色がぱっと明るくなり奥に通される。緊張してついていくとラウンジさながらのスペースでまずはカウンセリングを受けることになった。
私はカットだけのつもりだったのだが、明臣さんがトリートメントを含めたコースをあらかじめ頼んでいると聞かされ驚く。
「普段、ゆっくりできていないからって。優しいご主人ですね。奥様の労いをこんなふうにしてくださるなんて」
「……感謝しています」
正確に言うと“ご主人”ではないのだけれど。そこをあえて訂正するほど私も野暮じゃない。なによりどんな関係でも明臣さんの気遣いは有難い。
ヘアサロンはパリにも支店を持つ有名店だった。シャンデリアに金縁で装飾された鏡、真っ白なスタイリングチェアはゆったりと構えられていて、まるでお城のような内装だ。
一瞬ヘアサロンなのかどうか疑ってしまいそうになる。
「ご予約されていますか?」
店内に足を踏み入れるのをためらっていると、中から逆にスタッフに声をかけられる。若々しいが、それなりに貫禄を感じる女性だ。ベテランなのだとすぐに察しがつく。
たしか明臣さんの名前で予約していると言っていたので、私がぎこちなく彼の名字を告げる。
「……千葉です」
「千葉様ですね。お待ちしておりました!」
女性スタッフの顔色がぱっと明るくなり奥に通される。緊張してついていくとラウンジさながらのスペースでまずはカウンセリングを受けることになった。
私はカットだけのつもりだったのだが、明臣さんがトリートメントを含めたコースをあらかじめ頼んでいると聞かされ驚く。
「普段、ゆっくりできていないからって。優しいご主人ですね。奥様の労いをこんなふうにしてくださるなんて」
「……感謝しています」
正確に言うと“ご主人”ではないのだけれど。そこをあえて訂正するほど私も野暮じゃない。なによりどんな関係でも明臣さんの気遣いは有難い。