御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「楽しみにしている」

 そっと頭を撫でられ、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 今の私たちは、誰の目から見ても仲のいい家族に映っているのかな。

 続いてレストランに移動し、個室で夕飯を済ませた。イタリアンの美味しいお店で、食べ物を前にすると芽衣は目を輝かせて興味を示す。

 手を伸ばしてこちらの料理を欲しがる芽衣を軽く諌めつつ離乳食を与える。

 私も芽衣の離乳食を持ってきていたが、さっきのカフェといい乳幼児用の椅子や食器、食事まで完備なのは助かる。

 こういった高級店はそもそも子連れ自体嫌がられそうなのに、そこはホテルの方針もあるのだろうか逆に至れり尽くせりだ。

 味も抜群らしく、野菜たっぷりの豆乳スープを芽衣は満足そうに食べていく。あまりの芽衣の食べっぷりに明臣さんは目を丸くしていた。

「本当に芽衣はなんでもよく食べるな」

「その点は、母として有難く思っています。ただ、逆に食べ過ぎないように気をつけないとならないんですけれどね」

 スプーンを彼女の口に運ぶ手は止めず、私は答えた。芽衣の見た目はまったく太っていないものの念のため定期的に身長と体重を測って成長曲線を気にしている。

 子育てに正解はないとよく聞くけれど、なにもかもが初めてで手探り状態だ。

「……早希は、いつも芽衣のことを考えているんだな」

 そう告げる明臣さんはどこか複雑そうだった。ちなみに今日は彼もお酒を口にしていない。せっかくワインをはじめとしたアルコール類も充実しているのに。
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