御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「……俺の子か?」
咄嗟に違いますと口にしようとする。けれど腕に抱いている芽衣の存在がそれを止めた。
娘の前で嘘をつくの? この子自身の前で父親の存在を否定するの?
口の中に葛藤と言う名の苦味が広がる。私は社長を直視できずうつむき、ややあって観念した。
「……はい」
消え入りそうな声で答え目を閉じた。疑われる可能性を考慮しながらもこの後の展開は読めている。
仕事に妥協も容赦もない人だった。きっと彼はあの冷たい瞳で私を責める。
妊娠出産を黙って、娘をひとりで育てていた。どれほど勝手なことをしたのか、私だって自覚している。
知らない間に自分の子どもが存在していて平静でいられる人なんてそういない。
「川上」
思わず肩がびくりと震える。
「……俺は、そんなに信頼できない人間だったか?」
続けられた言葉に私は目を見開いた。社長を見ると怒りではなくつらそうな面持ちで、責められると身構えていた私の気持ちは一転し、罪悪感に染まっていく。
なにも答えない私に社長は切羽詰まった表情でさらに詰め寄ってくる。
「事実を知って無責任に罵ったり拒絶すると思ったのか?」
ああ、こんなことなら思いっきり責められた方がまだマシだった。
私は静かに首を横に振った。
「だったらどうして……」
「ごめん、なさい」
喉の奥を振り絞って謝罪を口にする。
「謝ってほしいわけじゃない」
それもそうだ。仕事ではもっと厳しい口調だったのに、今は言い方が幾分か柔らかい。
咄嗟に違いますと口にしようとする。けれど腕に抱いている芽衣の存在がそれを止めた。
娘の前で嘘をつくの? この子自身の前で父親の存在を否定するの?
口の中に葛藤と言う名の苦味が広がる。私は社長を直視できずうつむき、ややあって観念した。
「……はい」
消え入りそうな声で答え目を閉じた。疑われる可能性を考慮しながらもこの後の展開は読めている。
仕事に妥協も容赦もない人だった。きっと彼はあの冷たい瞳で私を責める。
妊娠出産を黙って、娘をひとりで育てていた。どれほど勝手なことをしたのか、私だって自覚している。
知らない間に自分の子どもが存在していて平静でいられる人なんてそういない。
「川上」
思わず肩がびくりと震える。
「……俺は、そんなに信頼できない人間だったか?」
続けられた言葉に私は目を見開いた。社長を見ると怒りではなくつらそうな面持ちで、責められると身構えていた私の気持ちは一転し、罪悪感に染まっていく。
なにも答えない私に社長は切羽詰まった表情でさらに詰め寄ってくる。
「事実を知って無責任に罵ったり拒絶すると思ったのか?」
ああ、こんなことなら思いっきり責められた方がまだマシだった。
私は静かに首を横に振った。
「だったらどうして……」
「ごめん、なさい」
喉の奥を振り絞って謝罪を口にする。
「謝ってほしいわけじゃない」
それもそうだ。仕事ではもっと厳しい口調だったのに、今は言い方が幾分か柔らかい。