御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 部屋に戻り、まずはお風呂の準備をする。姿が見えなくなると泣くので、芽衣を抱っこしたままバスルームに向かった。

「すごく広いお風呂だね」

「んー」

 手を伸ばそうとする芽衣を遮り、バスタブの栓をしてお湯の温度を確かめてから勢いよく出す。この分ならあまり待たなくても溜まりそうだ。

 しばらく芽衣とボーッと眺めて、一度戻る。

 キッズスペースに芽衣をごろんと転がすと、気ままに遊びだした。ブロック同士をぶつけて音を出し喜んでいる。今のうちに芽衣の着がえを出しておこう。

 明臣さんは戻ってくるのが遅いかもしれないから、芽衣とふたりで先にお風呂に入って寝てしまおう。

 ベビーベッドを部屋に用意してくれているけれど、いつもと同じように芽衣とは一緒に寝たほうがいいよね。実は大人用のベッドはキングサイズのものがひとつしかない。

 芽衣もいるし意識することはないかもしれないが、明臣さんと同じベッドで寝るのは、どうしても気まずかったからちょうどいい時間差ができた。

 だから、これでいいんだ。私たちは、芽衣の親という共通の立場で一緒にいるだけ。

 時間を見計らってバスルームに足を向けると、ちょうどいい量のお湯が溜まっている。お湯を止めてバスタブに手を入れ、熱さを確認する。

 うん、ちょうどいい温度。

 芽衣をバスルームに連れて行く前に、アクセサリーをはずしてワンピースの背中のファスナーを下ろす。芽衣を脱がす手間を考え、私自身は極力早く脱げるようにしないと。
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