御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
Mistake5 お互いの立場は明確にすべきです
 小さな泣き声で目が覚め、一瞬状況が理解できなかった。ほんのりと照らされたベッドルームが、いつもの自宅ではないと気づくのにわずかに時間を要する。

 そうだ、明臣さんと泊まりで出かけて、それで……。

 意識がはっきりと覚醒した私は、がばりと身を起こし、すぐ隣にいる芽衣を抱き上げた。

 さらに芽衣の向こう側を見ると、ホテルのガウンを羽織った明臣さんが眠っていた。鋭い眼光は瞼の裏に隠されているものの寝顔も十分に整っている。

 少しだけこちらとの距離を開けてくれているのは彼なりの気遣いなのか、このベッドがそれほど大きいからなのか。

 芽衣を寝かしつけるため、先に休むと彼に告げたまでは覚えている。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。

 ぐずる芽衣を抱え、私は足音を立てないようにしてリビングの方に移動する。明臣さんを起こしても申し訳ない。

 そういえばあのときもこっそりと彼の元を去ったな。

 時刻は午前一時過ぎだった。

「芽衣、大丈夫?」

 夜中に何度か目が覚めるのは度々あるが、今日はどういうわけか興奮気味に泣き出した。たぶん、いつもと環境が違うし、色々な体験をしたから疲れたのもしれない。

 ひとまず芽衣が落ち着くまで抱っこしてリビングを歩き回る。しばらくすると泣き声も徐々に収まってきた。

 怖い夢でも見たのかな?

 縦抱きにしてとんとんと優しく背中をたたく。芽衣もずいぶん重くなってきた。けれど身を預けてしがみついてくる姿は本当に愛らしくて、私が守らないと、といつも思う。
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