淡く脆いあの日の約束


ピピピピピピッーーーー


「んんん〜……っ」

朝から鳴り響く電子音。
私はその音を不快に感じながらもスマートフォンを手に取りアラームを消す。


「…なんだか懐かしい夢見たな…」


あれは遠い日の記憶。
小さな私達の淡く脆い約束だった。


「いってきま〜す!」

「いってらっしゃい!車に気をつけるのよ!」


キッチンから声をかけるママに「は〜い」と返事をしながら私は玄関でローファーを履き、キャラクターのキーホルダーを付けた通学鞄を肩にかけ直しドアを開けた。


「あ、」

「お」


ドアを開けたタイミングで家の門の前を通る幼馴染と出くわした。


「な〜に?美月様と一緒に行きたいの〜?」

「何言ってんだよ。家が隣で学校も一緒だったら登校時間かぶるだろ」


めんどくさそうに話すのは幼馴染の麻生(あそう) 楓太(ふうた)
生まれた時から家が隣同士に加え、私達の両親達はこの地元の同級生らしく家族ぐるみで仲が良かった。

同い年の私達は当たり前のようにいつも隣にいて、何をするにも一緒だった。

小さな時はそんな関係に何の疑問も感じなかったが、16歳になった今ではお互い成長しそれに加え"思春期"を迎えたためどこかぎこちなさを感じつつも私達の関係は大きくは変わらなかった。


「楓太宿題やった?英語」

「当たり前だろ。言っとくけど見せないからな」

「え〜!なんでよ〜!楓太のくせに生意気〜!」

「やってない奴が悪い。」

私は頬を膨らませて楓太を見上げ睨みつける。

幼い頃は私より小さかったのにいつのまにか身長を追い越され、いつも私の後ろに隠れていたのに今では間違った事があれば堂々と手を挙げて意見を言うようになった。

そんな楓太の変化にどこか遠くに行っちゃったようで私は少し寂しくも感じていたんだ。



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