みやとロウ。
「みや」

「……塞ノ神さま」


どれくらい、そうしていただろう

ロウの消えた方向を見つめたまま
微動だにしなかった私に、優しく声をかけてくれたのは塞ノ神さまだった

塞ノ神さまは私を見て
困ったように笑う


「………ロウが、もう来るなって」

「うん」

「……塞ノ神さまにも、お別れを言えって……」

「うん」

「………………どうして?」


目の縁に溜まっていた涙が
ぽろりと溢れる


ロウに拒絶されたことが
すごく悲しくて、痛くて

胸が押し潰されそうになる



許してくれたと思ってた

傍にいることを

嫌われてないって

大事にされてるって思ってた


これからも変わらず
傍にいて良いんだって思ってた



「……なんで?
……みや、なにかした…?
ロウに嫌われること、した…?」

「してないよ」

「…なら、なんで……?」


泣き続ける私の頭を撫でながら
塞ノ神さまは優しく微笑む


「ロウは、きみが大事なんだ」

「……でも、来るなって…」


あの『来るな』は本気の『来るな』だった

拒絶されたのは間違いない


「この前、怪我をしただろう?
あやかしに襲われて」


「…大怪我はしてない」


「髪も切られた」


「すぐ伸びるもん」


前よりも
少し短くなった私の髪に触れながら
塞ノ神さまは、また苦笑を浮かべる
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