みやとロウ。
「じゃあ、どうしたい?」

「………もう一度、話したい」


さっきは全然、声を出せなくて
言いたいことも言えなくて

引き留めることも
追いかけることも出来ず
ただ、見送るだけだった


もう一度、ちゃんと話したい


塞ノ神さまの言うことが本当なら
あの言葉が
私の事を想って言った言葉なら、なおさら



「分かった。ロウに伝えておくよ」

「………塞ノ神さまも
みやがここに来るの、反対…?」

「いいや?むしろ僕は
神隠ししてもいいくらい
きみを気に入っている」


「僕の神域にいれば
手出しされる心配はないし
外に出たい時は、詩織や僕が同伴すればいいだけの話だ」


「ロウは真面目で心配性過ぎるんだ
ああ見えて、意外と過保護だしね」


「ロウはきみに
普通の幸せを与えたいのだろうけど
幸せなんて本人が決めるもの
他人の物差しで判断するものじゃない」



「だから、ちゃんと伝えるといい
きみの思う幸せや、有り様を」



私の目の前にしゃがみこんだ塞ノ神さまは
袖口で優しく涙を拭うと
そのまま、ひょいっと、私を抱えあげる



「居たい場所は自分で決めなきゃね」



にっこりと浮かべた笑顔を私に向けると
塞ノ神さまは、そのまま歩き出す



……


………居たい場所は、自分で決める…



「……うん」



塞ノ神さまの言葉に勇気付けられた私は
ごしごしと涙を拭って、頷いた
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