みやとロウ。
「…」


思い過ごしだって思いたい


だけど、もし、万が一
そうだったとしたら……


「……とりあえず、しおりに連絡して…」


取り出した札
伝達用の式に、しおりへ言伝を命じる

式がちゃんと発動するのを確認してから
私は走り出す


………後は、塞ノ神さまを捜して
いなかったら、ロウに塞ノ神さまを呼んでもらって……


神域に着いた後の事を
あれこれ考えながら、先を急ぐ



だけど、途中、不意に



ぞくりと、全身の毛が逆立つような悪寒




ぴたりと足を止めて、そっと背後を振り返る




「…」



何かの気配



かさかさ、ざりざり


草木を掻き分け、石土を踏み締めるような音


そして


林の奥から
顔を覗かせた『それ』に息を飲む



「…………カモシカ…?」



呟いて、すぐに違うと気付く



見た目はそうだけど、中身は別もの



窺うように、じっとこちらを見つめる



赤黒く滲んだその瞳に感じたのは畏怖



………あれ、は……



頭の中で、重なる情景
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