みやとロウ。
ぎりっと下唇を思い切り噛む

痛みと共に
じんわりと口の中に広がる血の味

その痛みでほんの少し
身体を支配していた恐怖が薄れて
手足の自由が戻る




すかさず、扇を取り出して構えた



……走って逃げても、きっとすぐ追い付かれる

なら、まずは足止めを



焦る気持ちを抑えて
頭の中で冷静に自分に指示を出す


加減せず、扇を振る



湧き起こった暴風に
記憶喰らいは足を止めた


だけど


その攻撃が
記憶喰らいに直撃することはなかった


ばちんっ!!!と


記憶喰らいの目の前で
まるで見えない壁にぶつかったように
放った攻撃は四散して、消えた



「…」



……思いっきり、霊力を込めて振ったのに……



かするどころか、届きさえしない




『さほど強くはないあやかし』


『あっけなく倒せる』



それは力あるものからすればの話



………私じゃ、倒せない…


この祓具での攻撃が効かないなら
護符を使った攻撃も、きっと難なく破られる


足止めすることさえ、出来ない



絶望の2文字が頭に浮かぶ
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