みやとロウ。
―――………




『忘れないで』





「――……」



いつの間にか眠ってしまっていた私を
起こしたのは、そんな声


横になったまま
そっと自分の胸に手を置く



『忘れないで』



と、時折声がする



何年も前からずっと


ずっとずっと、呼びかけるように



誰かの、自分の声のような



悲しそうで



その度、胸が痛くなる



「…」



めまぐるしく回る毎日

忙しなく過ぎていく日々の中で


それでも、懸命に
途切れることなくその声は響いていた



きっと、何か意味がある



私が忘れてる記憶は
忘れたままにしていいものじゃないんだ


思い出さなきゃいけない記憶



「…」



それが例え

苦しい記憶でも、痛い記憶でも

悲しいだけの思い出でも


自分の一部なら




置き去りにしちゃいけない






ようやく詩織の仕事も落ち着いた



だから




「………探しに、行こう」
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