みやとロウ。
「犬と言えば、お前
施設にいた頃、1度、俺に買い物頼んだことあっただろ?」


考え込んでしまった私に
ふと思い出したかのような口調で
勇太郎は話しかけてきた


「……買い物?」

「そう。
で、なにかと思えば
全部、犬用の食い物でさ」



………犬?



「あの頃、お前よく外に出かけてただろ
だから、どっかで野良犬でも見つけて
面倒見てんのかと思ってた」



……
………違う、犬じゃなくて……




きつく結ばれていた糸が
しゅるしゅるとほどけていくような感覚




そして







『俺は犬じゃない』






突如、頭の中に響いた声に





胸が、騒いだ
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