みやとロウ。
「…」


これだけ痛くなるのも
苦しくなるのも初めてで

呼吸もうまく出来なくて


もしかしたら死んじゃうかもしれない


そんな思いが頭を過(よぎ)る


…おばあちゃん達に会えるのは嬉しいけど



「…痛いのは……やだなぁ…」



そっと目を閉じて
ぽそりと呟いた時だった



「ひどい淀みだな」



降ってきたのは低い声


凛と響いたその声に
うっすら目を開ければ


そこにいたのは…



「……おっきい……いぬ……?」



自分の倍はある大きな生き物が
こちらを見下ろしていた


四足歩行の犬のような生き物


ぴんっと立った獣耳
ふさふさの尻尾


白銀の、滑らかで触り心地の良さそうな毛並み


金色の瞳は吸い込まれそうな程、きらきら輝いていて


あまりに綺麗で、目を奪われた



じっと私を見つめて
何かに気付いたようにぴくんと耳を動かした



「…白い子供。随分と珍しい」



物珍しげな視線に反応を返す余裕はなかった


ひゅっと、首を絞められたように
息が出来なくなって


滲んでぼやける視界



「っ…」



ああ、死ぬんだ


覚悟を決めて、目を閉じた



けど




「……ここで死なれても困る」
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