みやとロウ。
―――……



最大の不安要素だった記憶喰らいのその後




『……記憶喰らいはどうなった?』



そう、詩織と塞ノ神さまに訊ねた


最悪の事態を予測して
体を強張らせ


固唾を飲んで返答を待った


だけど、私の不安を打ち消すように


詩織と塞ノ神さまは顔を見合せ
揃って笑顔を浮かべた



『あなたが目印をつけてくれたおかげで
退治することが出来ました』


そんな詩織の言葉に面食らった


『……あれ、ちゃんと発動したの?』

『はい。弱くはありましたが』



『ですが、弱かったからこそ
記憶喰らいはその目印を
さして気に留めなかったのでしょう』



結界の展開に
ほとんどの霊力を継ぎ込んでいた


最後の最後


意識を手放す寸前に
記憶喰らいに『目印』の式を打ち込んだ



私が倒れた後

誰かに気づいて貰えるように

力のあるひとに退治して貰えるように


少しでも、その手助けをと



でも、土壇場で
がむしゃらに放ったその一手が
まさか、本当に役に立つなんて思いもしなかった



『長くは持たない
すぐに消えてしまうような弱々しい術式』


『大した痛手ではない
だから、放置した』


『その油断に
俺達は付け入る事が出来ました』




『…………じゃあ、これでもう
本当に終わった?』




詩織と塞ノ神さまは、笑って肯定する



自分がいない場所
知らない時間で起こった出来事

実感もなければ、現実味もない


でも、ふたりの晴れやかな表情を見れば
それが本当なんだと理解できた




『『みや』』



『ありがとう』


『ありがとうございます』




実際に記憶喰らいを退治したのは
私ではないのに



手放しで与えられた称賛と感謝の言葉



なんだかとても照れくさくて



でも



そんな風に言って貰えた事が嬉しくて




私は、はにかみながら笑顔を返した
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