みやとロウ。
あたたかい何かが体に触れて


その瞬間から
すぅっと痛みが引いていって


徐々に呼吸が楽になっていく



「…」

「その内、歩けるようになる」


まぶたを上げれば
寄り添うように私の傍に腰を降ろしていたその生き物は、立ち上がってそう言う


まだふらふらだけど
起き上がることは出来た



「…ど、して…」

「?」

「……どうして、助けたの…?」

「死にたいのか?」

「…ううん…すこし、疲れただけ…」

「それだけ淀みを貰えばな
少しどころじゃないだろう」

「…分かるの?」

「まあな」

「…」



不思議な生き物

大きな大きな、犬の形をした
人の言葉を話す生き物

ちらりと見える鋭い牙に爪

襲われれば私みたいな子供はひとたまりもない

初めから
恐怖なんてものは感じなかったけど
食べられてしまうかもとは思った


それなのに


……助けてくれた



「大丈夫そうだな。さっさと帰れ」


私の症状が落ち着いたのを確認したその生き物は
そう言い残して、森の奥へと姿を消した



その後ろ姿を私はずっと見つめていた
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