みやとロウ。
『みやは限りある貴重な時間を
きみと過ごしたいと
きみと一緒にいたいと望んでる』


『きみといることが幸せだと言ってる』


『みやの幸せを
他でもないきみが奪うのかい?』


『あの子の幸せを願うきみが
あの子の幸せを奪うのかい?』



大事だと、大切だと

守りたいと言うならば

他の方法を探せばいい

きみも、あの子も傷付かない方法を


別れるという選択が

それだけが、すべてだと決めつけないで




『失うその時まで
たくさん愛してあげればいい
一緒にいてあげればいい』



あの子が傷付く以外にも
あの子をなくすこと、失うことにも
狼炎は恐怖を抱いてる


自分達と比べれば
人の一生なんて一瞬で、儚いもの


大事に想えば想うほど
いずれ訪れる今生の別れは
重く辛いものになる


僕も別れは苦手だけれど
狼炎はもっと、それが嫌いだ


何年、何十年、何百年経っても変わらない


だから、狼炎は
ここを訪れる人をずっと拒んでいた


この数百年
僕の神域に立ち入れる人はたくさんいた

ここを訪れる人も同じく

だけど

何の害がなかったとしても
狼炎は決して、人を『中』には入れなかった



情が湧く前に

引き返せなくなる前に


大切な存在になってしまう前に



拒んだ



そんなきみが、あの子は受け入れた



きみは優しいから
放って置けなかったんだろう?

泣いているあの子を


その事を今、後悔してるんだろう?



でもね

忘れないで貰いたいのは



あの子は



きみのその後悔に救われたんだって事
< 155 / 162 >

この作品をシェア

pagetop