みやとロウ。
『いずれ失うとしても
残るものはちゃんとある』


『それは痛みや悲しみだけじゃない』



それはきみも、もう知っているはず

だからこそ
今、そんな表情を浮かべるんだろう?


愛しいから

本当は手放したくないんだって

顔に書いてる



『それに、きみが手放そうと
突き放そうとしても、無駄だと思うよ』


『あの子は、存外
頑固で負けず嫌いだ』


『きみが初めて出会った頃のように
懲りずに、毎日やってくるさ
きみが折れるまで』


『だから、観念して折れるといいよ』



意地悪く笑いながら、その肩を叩けば
狼炎は、それはそれは深くため息をついて


それから



『………話だけは、聞いてやる』



ぶっきらぼうに、そう答えた
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