みやとロウ。
過去から今に意識を戻せば


僕の気配に気付いたのか
不意に狼炎がこちらを振り返り
つられてみやも振り返る


僕の存在に気づいたみやは
可愛らしい笑顔を浮かべて
ぶんぶんと勢い良く手を振った


そんな姿が可愛くて、思わず吹き出す


本当に変わらず無邪気だ


同じように手を振って応えれば
さらに嬉しそうに表情を崩すみや



「……」



……もう、戻らないと

取り戻せないと思った時間



また繰り返すのかと

何度、奪えば、傷付ければ気が済むのかと


悲しみと、怒りと、悔しさで
気が狂いそうになった


神とは名ばかりだ


肝心な時に、いつも僕はそこにいない

その後も、彼らを救えなかった


すぐ傍にいる大切なひとさえ守れなかった




だけど



きみは違った



きみが全てを覆してくれた



あの子が起こした奇跡が
狼炎と僕を、過去のしがらみから解き放った


悲しみも苦しみも、痛みも絶望も

永遠には続かないこと


必ずまた光が差し込むこと


それを証明してくれた



あの子は灯火だ


真っ暗な闇に光を灯す


道を指し示す光



きみが

狼炎を、僕を、救ってくれた
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