みやとロウ。
「名前」


「名前、教えて」



……。



悩むような沈黙

黙って、じっと見つめたまま言葉を待つ


私の視線に耐えかねた様子のその生き物は
ため息をついた後にしぶしぶ答えた


「…狼炎だ」

「……ろう…?」


ぴくりと耳が反応する


「…あいつと同じ呼び方をするな」

「あいつ?」

「…もういい。じゃあな」



私とこれ以上会話する気はないらしい
ロウは早々にその場を去っていった



来るな来るなと何度も言われたけど
結局私はその言い付けを守らず
何度もこの場所に足を運んだ

口うるさく警告しても
懲りもぜずやってくる私

ロウは毎回迷惑そうにしていた


だけど


迷惑そうにしながらも、追い返す前に
毎回必ず私が『貰った』感情を取り払ってくれた


厳しく聞こえる言葉や表情の中に
不思議とあたたかさがあって

どうしてか優しさを感じて


この森が『普通』じゃないと分かっていても

時々感じる『嫌な視線』や『何かの存在』に気付いていても


そんなロウに会いに
足しげくここへ通っていた
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