みやとロウ。
「……この森、塞ノ神さまの場所なんだよね?みや、勝手に入ってごめんなさい」

「勝手じゃないさ
ロウが入ることを許したんだろう?」


「結界に弾かれなかったって事は、問題がないってことだし。
好きなだけいてくれていいよ」



にこりと塞ノ神さまが笑うのと同時に
ふっと縁側から差し込んでいた光が途絶える


「……まったく…
どこへ行ったのかと思えば、こんな所にいるとは」


光を遮った大きな影はロウだった


「ロウ」

「やあ、ロウ。久しぶり」


すっかりロウの事を忘れてた


様子から察するに
ずっと私を探してくれていたんだろう


駆け寄って、ごめんなさいと謝れば
ロウはため息をついて

それからにこやかに手を振る塞ノ神さまに呆れたような眼差しを向ける



「一月(ひとつき)もどこへ行っていた、お前は」

「いや~、ちょっと出雲の方に」

「神在月はまだ先だろう
そもそもお前は留守神だろうが」

「息抜きさ」

「お前は息抜きし過ぎだ
少しは真面目に仕事をしろ」

「失礼だね
まるで、僕が仕事をしてないような言いぐさだ」

「事実、一月も仕事を放棄していただろう
おかげで境界付近にまた『曲霊』が増えた」

「増えるのは仕方ないさ
人はいつの時代も、どうしようもなく
迷ってしまう生き物だから」

「それを導くのがお前の役目だろう」

「まぁね」
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