みやとロウ。
「…塞ノ神さま、不思議なひと」


さくさく
足元の木の葉の感触を楽しみながら、ぽつりと呟く



綺麗で、穏やかで、ふわふわしてて

掴み所のないひと



「あれはただ能天気なだけだ」

「みや、ここに通い始めて結構経つのに
今日まで塞ノ神さまと会わなかった
あんまり、森にいない?」

「ああ、息抜きと称しては
その辺をふらふらして、満足したら帰ってくる」

「ふーん」


なんとなく、神様って存在は
社や祠、そういった祀られている
その場所から動かないようなイメージがあった

いつでもそこにいて
そこを訪れた人達を見守っているようなイメージだったけど


どうやら塞ノ神さまはそうではないらしい


さっきの会話、ロウの口ぶりからしても
塞ノ神さまはきっと
自由奔放な神様なんだろう



でも



『どういたしまして』



曲霊を見る目

浮かべる表情

与える言葉はどれも優しくて、あたたかくて


あの提灯を掲げた時の

無条件で手を差し伸べるようなその姿は


まぎれもなく『神様』だった



「みや、塞ノ神さまと仲良くなれるかな」

「仲良くなってどうする」

「友達になってもらいたい」


「みや、こんなだから
ちゃんとした友達いない」


貰ってしまうから


貰って、具合が悪くなったりしてしまって
普通に話したり、遊んだりできないから


何かと私を気にして
構ってくれる勇太郎相手でさえ
短い時間の会話が精一杯


最初は大丈夫でも
やっぱり、後から『悲しさ』にやられてしまって


遊んだりなんて到底できない
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