みやとロウ。
「…」



怖かったのと

びっくりしたのと

安心したのがごっちゃになって



涙が出た



「……ああ、いや
あの状況だったら無理もないな」

「…」

「だから言ったんだ
あんな風に手を出してくるものもいるから
『奥』には行くなと」


「……ロウが、…いないから…」

「…」

「………みやを、置いてくから…」

「…」


嗚咽を漏らしながら
途切れ途切れに言葉を絞り出す


感じていた不安や焦り、恐怖を


でもうまく伝えきれなくて


それが歯がゆくて


私はロウの首に腕を回して
ぎゅうっと強くしがみつく


ロウは小さな子供に手を焼く母親のように
また、深くため息をついて


でも



「悪かった」



言いながら、あやすように背中を撫でる




その手付きがあまりにも優しくて




私はさらに泣いてしまった
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