みやとロウ。
……?

……なんか、木の影が…大きく…


大木の影が滲むように
ゆっくりと広がったと思えば


揉めている様子のふたりのそばに
忍び寄るように伸びていく


そして


勢い良く飛び上がり
ふたりを飲み込むように、大きく広がる


「…っ!」


考えるよりも先に身体が動いた



ふたりを抱き締め、地面を転がる



「……っ」


飲み込まれる寸前
なんとかぎりぎり間に合った


転がった拍子にあちこち傷だらけになる
痛みに顔をしかめながらも
慌てて立ち上がり


少し離れた所でうごめく影に視線を向ける



『みやっ、大丈夫?!』


腕の中で心配そうに声をあげる曲霊


「…大丈夫。あれが…魂喰らい?」

『うん』


うごめく影は人の形をとって
ゆっくりとこちらに近付いてくる


後ずさりながら
どうしようどうしようと考える



けど、頭が回らない



何も思い付かない




『みや、ふゆ達をおいて逃げて』

「だめ」

『ふゆやいとよりみやの方が危ない
あいつは『白い魂』が大好きだから』

「だめ」

『みや…』



曲霊を身代わりにするなんて出来ない



なにか



なにか…










………だめ…


なにも…浮かばない…
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