【改訂版】新アリョーナの旅路
第8話
アタシとボブさんは、2月10日から婚姻届を出さずに結婚生活を始めた。

義母は『気持ちが落ち着いたら婚姻届を出せばいいよ…』と言うた。

けれど、アタシは拒否する。

婚礼家具もなければ、花嫁衣装もない…

あるのは、ボストンバックに入っている自分の衣服だけ…

超質素な形で嫁入りしたので、早くも義母(ボブさんのお母さまの表記を義母に変更します)や周囲の不安が広まった。

ボブさんの年収は10万ドルと言うた。

けれど、ボブさんはウソつきだから信用しない…

そういうことで、アタシはチャールズ通りにある郵便局に再就職した。

それだけでも、まだまだ足りない。

足りない分は、チャールズ通りの交差点付近にあるコンビニのバイトでかせぐことにした。

かけもちでバイトして、日当の合計は35ドル50セント…

月に20日働いて、月給の合計は710ドルである。

アメリカ合衆国の最低賃金は、ほとんどの州が時給9ドル台に設定されている。

西海岸のエリアが一番高く、9ドル50セントである。

アタシがいる東海岸のエリアの最低賃金は、時給何ドルだったかなぁ…

たぶん、ボブさんの月給は一万ドル以下だと思う。

なので、アタシが稼いで不足分を補うしかない…

ボブさんは、アタシの理想の結婚相手像(世帯ではなく、相手の収入が高収入・親きょうだいから自立して生活する力があるなど、数え切れないほど項目がある)じゃない…

なので、いつかは離婚する…

アタシとボブさんが結婚してから3ヶ月が経過した。

けれど、婚姻届は役所に出していない。

なんで、婚姻届を役所に出すのよ…

なんのために出すのよ…

めんどくさい…

アタシとボブさんは、夫婦間のコミュニケーションがうまく取れない…

気に入らんごとがあれば、義母と大ゲンカしてうさを晴らす…

ボブさんとも、ほんの小さなことで大ゲンカを起こす…

だから、結婚生活がイヤになった。

近所の住民のみなさまは『ボブさんカタの家のお母さまが嫁いびりばかりしているからいけないのよ…』と声をひそめて話すようになった。

家のキンリンに、アタシと同世代の人がいないので、相談相手がいない。

それもあるけど、今のアタシはボブさんと早く離婚したいので、気持ちがあせっていた。

2013年5月4日のことであった。

この日、ボブさんのいとこさんがカノジョを連れて家に遊びに来た。

ボブさんのいとこさん(22歳)は、マサチューセッツ州立工科大学の同じゼミで知り合ったカノジョ(ボブさんと同い年)とお付き合いをして、2ヶ月前にプロポーズした。

ふたりは、大学を卒業後に結婚をすることを決めた。

そのことを義母に報告した。

義母は、ボブさんのいとこさんに『おばさまがふたりの結婚式の費用と新婚生活のおカネを出してあげようか?フンパツするわよ。』とうれしい声で言うた。

ボブさんのいとこさんとカノジョは大喜びである。

義母は、ボブさんのいとこさんの新婚生活に大金をかけた。

それから1ヶ月後のことであった。

義母がボブさんのいとこさんとカノジョの結婚に家の貯金をいちじるしく使い込んだことが原因で、ボブさんと義母の関係が険悪になった。

その上に、ボブさんとアタシの関係も険悪になった。

そして、ボブさんの家の親類と険悪になったから、アタシの居場所がなくなった。

2013年6月4日のことであった。

この日、家にボブさんのいとこさんとカノジョが遊びに来た。

ボブさんのいとこさんとカノジョがキッチンで夕食を作っていた。

テーブルの上に、ボブさんのいとこさんとカノジョの手料理が並んでいる。

今日の夕食は、フライドチキンとフライドポテトとグリーンサラダとシーフード料理とトマトポタージュである。

食卓には、ボブさんと義母とボブさんのいとこさんとカノジョの4人がいた。

けど、アタシはいなかった。

バイトに行く支度を整えたアタシは、赤茶色のバッグを持って家を出ようとした。

その時に、アタシはいとこさんのカノジョとトラブった。

「あのね!!アタシはこれからバイトに行くのよ!!バイトへ行かせてよ!!」
「お気持ちはよく分かるけど、お腹がすいていては…」
「うるさいわね!!晩ごはんいらないと言ったらいらないわよ!!」
「せめてポタージュだけでも…」
「ふざけるな!!よくもアタシにいちゃもんつけたわね!!」
「違います…アタシとカレは、厚意で晩ごはんを作ったのです…」
「ふざけるな!!アタシが料理ができないことをグロウしたわね!!」
「違います!!アタシとカレは、料理教室で習った料理をおばさまたちに食べてほしいから作ったのよ…」
「いいわけ言うな!!アタシは、ボブさんが年収10万ドルだと言うてウソつかれたから、不足分を稼いでいるのよ!!華の女子大生のあんたなんかにアタシの気持ちが分かってたまるか!?」

義母は、泣きそうな声でアタシに言うた。

「アリョーナさん、ロブの恋人さんはね…厚意でごはんを作ってくださったのよ…」
「キーッ!!」

(ガラガラガラガシャーン!!)

思い切りブチ切れたアタシは、食卓をひっくり返した。

「アリョーナ!!なんでひどいことするのだよぅ!!」

ボブさんが泣きそうな声でアタシに言うた。

アタシは、より激しい怒りを込めてボブさんに八つ当たりした。

「あんたがついた大ウソで、アタシがどんな思いをしているのか分かっていないわね!!」

アタシはこのあと、ボブさんのいとこさんとカノジョに怒号をあげた。

その後、家を飛び出した。

ボブさんは、ふてくされた表情で『外へのみに行く!!』と言うて家を飛び出した。

そして、次の朝の朝食の時のことであった。

アタシは、義母に八つ当たりした。

「義母(おかあ)さま!!義母さまがロブさんを甘やかしたので、アタシとボブさんの夫婦関係はハタン寸前よ!!どうしてくれるのよ!?」
「アリョーナさん、どうしてロブにひどいことを言うのよ…ロブはお母さんがいないのよ…」
「義母は、アタシとロブさんの結婚にケチをつけたから許さないわよ!!」
「ケチなんかつけてないわよ…ロブの結婚式が終わったら、次はアリョーナさんとボブが挙式できる段取りを取るから…」
「イヤ!!拒否するわよ!!」
「どうして拒否するのよぅ…」
「イヤなものはイヤなのよ!!ついでに言わせてもらうけど、アタシ、ボブさんと離婚するから…」
「リコン…」
「そうよ!!ロブのカノジョがアタシに暴力をふるったので、ボブさんと離婚する…ついでにリエンするから…」

それを聞いた義母は、うろたえた表情でアタシに言うた。

「アリョーナさん…どうしてそんなことを謂うのよ…」
「あの時ボブさんがイライラしていたから、アタシは仕方なく結婚をショウダクしたのよ!!だから婚姻届けを出さなかった!!…アタシは結婚して損した…こんなことになるのであれば女ひとりで生きて行く方がよかった…イヤ…もうイヤ!!」
「アリョーナ…別れたくないよぉ…」
「ふざけるな!!よくもアタシにウソついたわね!!」
「アリョーナさん、どうしてボブにひどいことを言うのよ…ボブは本当に州庁の職員よ。」
「ふざけるな!!ボブさんは、アタシの理想の結婚相手じゃないから離婚するのよ!!アタシは本気よ!!」
「それじゃあ、ボブはどうするのよ?」
「義母さまがメンドーみなさいよ!!…アタシは、うーんと遠い国に行くわよ…そこで新しい恋人を作るから…ボブさんにお嫁さんが必要だと言うのであれば、ちがう家のオジョーヒンな女性にしてよ…」

ボブさんと義母と大ゲンカを起こしたアタシは、赤茶色のバッグを持って家を飛び出した。

それから夫婦関係は、ハタンの危機にひんした。

アタシから離婚を告げられたあいつ(ボブさんのことは、以後あいつと表記する)は仕事が思うようにできなくなった。

家に居ても、アタシとあいつは大ゲンカを繰り返す。

6月11日頃、あいつはアタシの顔をグーで殴った。

あいつはアタシに『オレは良縁に恵まれなかった!!オレは嫁さんなしで生きて行く!!再婚しても条件が悪くなる…独身の方が気楽だ!!』と言うた。

あいつに言われたアタシは『何なのよ一体!!あんたは勝手すぎるわよ!!』と怒鳴り返した。

そして、血しぶきが飛び散るレベルの大ゲンカを起こして傷ついた。

6月12日、アタシはボストンバックと赤茶色のバッグを持って家出をした。

アタシは、あいつをすてた。

同時に、女のしあわせをすてた。

そしてまた同時に、仕事をすてた。
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