メリーバッドエンド
掃除機を隅々までかけ、床をクイックルワイパーで拭いていく。たったこれだけのことなのに息が少し上がってしまい、監禁生活でかなり体力が落ちたんだと改めて実感した。

「次は洗濯物干そうかな」

少し椅子に座って休憩した後、私は立ち上がって洗濯物を干していく。今日は天気がいいから洗濯物もよく乾きそうだ。

「洗濯物を干す時、申し訳ないですが若菜さんのは室内に干してください。犯人に若菜さんがここにいるんだと教えることになってしまうかもしれませんので」

そう黒岩さんに言われていたため、黒岩さんのシャツなどはベランダに干し、私のは室内に干す。空けてある窓から気持ちいい風が入り込んできて、私は心地よさから目を閉じた。

こうしてきちんと家事をしたのは五ヶ月ぶりだ。監禁されていた時は、洗濯も掃除も料理も、何もかも圭さんか牧さんがしてくれていたから……。

「買い物……は黒岩さんがしてきてくれるから、読書でもしようかな」
< 103 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop