メリーバッドエンド
「若菜、どうして俺から逃げたの?こんなに愛してるのに……」

スルリと頬を撫でられる。先ほどの荒々しいキスとは打って変わって優しい手つきだ。

「私は、監禁されて愛されることを望んでいません。圭さんのことは、俳優として好きでした。だから、握手会で会えた時、とても嬉しかった……。なのに、こんなこと……」

私がそう言うと、圭さんの顔がまた近付いてくる。恐怖で目を強く閉じると、おでこに柔らかい感触がした。続いて頬に柔らかいものが触れる。圭さんにキスをされているのだとわかり、体が強張った。

「俺はね、若菜が俺以外の男に会うのが嫌なんだ。若菜の笑顔を他の男に向けてほしくない、俺だけを見ていてほしい、でも若菜はきっと口で言ったところで聞いてくれない。だから閉じ込めた。閉じ込めて二人きりの世界を作れば若菜は俺だけを見て、俺を好きになってくれるでしょ?」

でも、そう言った刹那に圭さんの声のトーンが低くなる。目を開ければ圭さんの表情は怒っている。
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