メリーバッドエンド

「は、はい！」

作ってなどいない、本当に緊張したような上ずった声がした。そして俺の前に現れたのは、腰にベルトを巻いたシンプルなデザインのアイビーグリーンのワンピースを着たショートカットの女性だった。先ほどまで、露出度の高い服かリボンやレースがたっぷりのロリータ服しか目にしていなかったため、シンプルなワンピースがとても可愛らしく見える。

「こんにちは。応援してくださってありがとうございます」

恥ずかしそうにしているその女性がとても可愛く見えて、俺は気付いたら自分から声をかけていた。すると、女性は俺を見つめた後、「こちらこそ、素敵な作品を見せてくださってありがとうございます」と笑った。

ドキッと胸が高鳴ったのがわかった。恋に落ちた瞬間だと脳が伝えてくる。この名前も知らない女性の笑顔に、俺は一目で恋に落ちてしまったんだ。

「えっ、えっと……」

女性を見つめて固まる俺を見て、女性は戸惑ったように俺と俺の手を交互に見つめる。そうだ、握手会なんだから握手をしないと……。