メリーバッドエンド
「フフッ。若菜が早く俺に溺れてくれないかな〜」

完全に溺れて、俺がいないと生きていけないくらいまで堕ちてほしい。そうすればもう逃げることはないし、安心して暮らしていけるんだから。

アルバムを手に取っている間、俺の目はどこか妖しく光っているように思えた。



そして翌日、俺はキャリーケースを手に持ち、紫水圭だとバレないように帽子をかぶってサングラスをつける。

「それじゃあ、行ってくるよ」

俺がそう言うと、家事手伝いとして来てくれた七海が「行ってらっしゃいませ」と頭を下げる。その隣で若菜が俺をジッと見つめていた。

「若菜、行ってくるね。ちゃんと電話するから」

「圭くん、行ってらっしゃい。頑張ってね」

笑顔で言われ、寂しがられないのが少し悲しいと思いつつ、俺は若菜の前にそっとかがむ。若菜が首を傾げたので、「キスして?一週間もキスができないから」と言う。

「えっ?キス?」

若菜は顔を真っ赤にする。いつもキスは俺からで、若菜からなんて初めてだからかな。
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