メリーバッドエンド
圭さんはそう微笑み、私の肩と太ももの裏に手を回して抱き上げる。お姫様抱っこってやつだ。少女漫画でしか見たことがない光景に、私はすぐに恥ずかしさを覚えてしまう。

「け、圭くん!自分で歩くから……」

「ダ〜メ。降ろしたら逃げちゃうでしょ?」

華やかな顔を近づけられ、互いの吐息がかかる。恥ずかしくて死んでしまいそうだ。私は熱くなった顔を逸らす。

「……わ、わかった……から……」

「うん、いい子」

圭さんは微笑み、寝室に向かって歩いて行く。リビング以外の部屋にそういえば入ったことがない。ちゃんと間取りを覚えておこうと私は辺りを見る。

廊下は、牧さんのおかげでゴミ一つ見当たらないほど綺麗だ。ごちゃごちゃと余計な調度品が置かれていなくてシンプルな廊下は、私が一番知りたかったこの家の間取りをよく教えてくれる。

(あっ!あれが玄関のドア……)

頑丈そうなドアがチラリと見えた。圭さんは完璧主義だからドアに変な細工がしてあるんじゃないか、って心配していたけど普通に内側からも開けられるようになっているみたいだ。そのことに安心する。
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