メリーバッドエンド
そんなことを考えながら夜になるのを待つ。脱出決行は夜だ。

読書をしたり、ルルちゃんやリリちゃんと遊んだりしているうちに時間は過ぎていく。もうすぐ自由になれるんだと思うと、胸がドキドキして緊張と喜びが混ざり合っていく。

「若菜様、夕食ができました」

「牧さん、ありがとうございます」

夜の七時頃、時間ぴったりに牧さんは夕食を出してくれる。今日の夕食はラザニアだ。牧さんは手早くおしゃれでおいしい料理が作れてしまう。もし、普通の知人だったら料理を教えてほしいって気軽に言えたんだと思う。

夕食を食べてしばらくしてからお風呂に入り、牧さんが用意してくれたパジャマに袖を通す。ここまではいつも通り。

いつもなら、圭さんが帰ってくるまで牧さんは私を監視している。私が眠るため地下室に戻っても、圭さんが帰ってくるまで牧さんは待っている。でも今日は違うんだ。

テレビを見つつ、私はチラリと壁にかけられた時計を見る。時計の針はゆっくりと九時へと近づいていく。
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