メリーバッドエンド
恐怖で体がまた震え出す。震え気味の足では走ったりすることも、まともに歩くことさえできず、私はその場に座り込んでしまった。

五ヶ月ほどの間、ずっと拘束されて行動を制限されていたからか、思っていた以上に体力が落ちている。ちょっと動いただけで息切れしてしまい、このザマだ。

「何で……何で誰もいないの……!?」

絶望から叫びたくなる。神様は私の味方をしてくれていたんじゃなかったの!?その時、暗闇の中から眩しい光が現れた。それが懐中電灯の灯りだと気付くのに、驚くほど時間がかかってしまう。

懐中電灯を持った誰かが、私に急ぎ足で近付いてくる。もしかして圭さん!?私の体はさらに震え、縋るように家の壁に体を押し付けて目を強く閉じた。

「君、大丈夫かい?」

かけられた声は圭さんのものより低く、私はゆっくりと目を開ける。そこにはグレーのスーツを着た黒髪の男性が立っていた。

圭さんじゃない!そのことが嬉しくて、安心して、私の目から涙があふれていく。気が付けば、私は男性に抱き付いていた。
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